貴方の世界を想い出しながら、そっと現実から離れる。
貴方の創り上げたものは全て美しくて、それでいて儚い。いや、儚いからこそ美しいのだろうか?
大雑把なところから細かいとこまで、全てが貴方らしい。
想うだけで、こんなにも貴方を感じれるのに、なんで、本物の貴方は何処にも居ないのだろうか?
私が持っている貴方の世界は、
ただの記憶だけ。
全て、貴方の家族に奪われてしまった。
私が貴方の作品を盗む泥棒にでも見えたのだろうか。
または私が貴方と仲が良いことを知っていて、私を毛嫌いしていたのだろうか。
…多分、どっちもだろう。
「私達の息子を奪いやがって」
このアバズレ!
…貴方が、もし生きていたなら、
この台詞を聞いて、どう思うだろう?
きっと、諦めたように笑うだろう。
…『貴方』がまだ生きているときに、息子扱いなんて、
1度もしていなかった癖に。
ずっと傷つけてばっかりだった癖に。
挙句の果てに、私から彼の世界を全て奪っておいて、
そんなこと、言わないでよ。
音のしない雫が頬を伝う。
…これでは、貴方の世界が汚れてしまう。
溢れ出る嗚咽を他人事のように聞きながら、クッションに顔をうずめた。
突然、ガタン、という音がした。
その刹那、ゆりの花の匂いがした。
びっくりして、思わず音のした方に顔を向ける。
そこには、
1輪のゆりの花が横倒れになっていた。
ぐしゃぐしゃの顔のまま、立ち上がって花をそっと持ち上げる。
…造花だ、これ。
一体何故…?
………
『僕は、君を愛しているよ。
でも、それと同じくらい…』
この花を、好いているんだ
………
ようやく、貴方を見つけれた気がして、
私の顔は、もっとぐしゃぐしゃになってしまった。
4/29/2024, 8:07:24 AM