NoName

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泣かないでほしい

そう思う人は初めてで

僕よりも大きな目からぽろぽろと溢れる涙を拭いたくてたまらなかった

僕の掌が余るくらいの頬に触れ親指で拭う、驚いた彼女が僕を見上げる

想像して居た堪れなくなって、結局使い古したリュックから出したタオルを彼女の顔に押し付ける

ビクッと身体を震わせた彼女は押し付けられたものをタオルだと認識した後、一言発した

「汗臭い」

「うそ!?まだ使ってないよ」

焦ってタオルを回収した僕に泣き腫らした目の彼女が笑いながら言う

「冗談だよ」

もう涙は止まったみたいだ

この笑顔の方がずっと良い

そう思う人も初めてだ

「帰ろうか」

僕の問い掛けに頷いた彼女は当然のように隣に並ぶ

今この帰り道、彼女の隣は僕のもの

これからもずっと隣にいたいとはまだ言えない

11/30/2024, 12:12:32 PM