明るい。だけど今の時刻は真夜中。
あつい。だけど今は真冬。
賑やか。だけどすぐ静かになる。
ゴウゴウと街を飲み込んでいく炎。天まで届く黒煙。
崩れ落ちる建物。かつて生き物だった炭。
私は翼をはためかせ空から街の様子を見下ろしていた。
私は俗に悪魔と呼ばれている。
ここにいる理由は魂の回収のため。
言っておくけど火を放った犯人は私ではない。
悪魔が直接手を出してはいけないと定められているからだ。
それはさておき、私は大袋の口を開けてさまよえる魂を片っ端から放り込んでいく。
この魂をサタン様に捧げることでサタン様は神と成り私たち悪魔を救済してくれる……らしい。
あらかた回収が済んだので引き上げようとすると、どこからか赤ん坊の泣き声が聞こえていた。
声を頼りにガレキをどかすと、大人に守られるように包まれていた無傷の赤ん坊が元気よく泣いていた。
運の良い奴、と呟いて私はその赤ん坊の魂に印を付けてから魔法で遠くに飛ばす。
もし飛ばした先で運悪く死んでしまったらその魂は私の元に戻ってくるし、生き延びてもいずれ私と出会う運命にある。
その時には奴の魂をバリボリ喰って力をつけるのさ。
赤ん坊よりも大人である方が恨みやら絶望やらを溜め込んで美味だからね。
ちょっとぐらいならつまみ食いしたって咎められはしない。
まあそういう呪いでもありマーキングでもある。
この世では私と奴、二人だけの。
7/15/2025, 2:15:03 PM