縁-えん-

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”涙の理由”
「えっと、どうした?」
「先輩、女の子に涙の理由
なんて聞かないでくださいよ。」
それが先輩と私の初めての会話だった。


私は1つ年上の同じ水泳部の先輩に恋をしている。完全に片思いだ。毎日部活で見れるのが楽しみだった。
先輩の泳いでる姿や笑顔が好きだった。好きだけどただ見ることしか出来なかった。そんな自分が嫌だった。せっかく同じ部活なのに何も出来ないまま先輩は引退してしまった。部活の引退式の帰り泣いてしまった。もう関わることないんだなと思うと淋しくなってきた。先輩が卒業する前にせめて想いだけは伝えたかった。だから手紙を出そうと思った。私は何度も何度も書き直して自分の想いを書いた。付き合ってくださいとは書かなかった。好きだという想いが伝わればそれでよかった。卒業式の朝私は先輩の下駄箱に手紙を入れた。そして卒業式が始まった。私は手紙のことや今までの先輩のことを思い出して泣きそうになったがクラスメイトにバレたくなかったので我慢した。卒業式が終わり私は帰る支度をしていた。靴を履き替え、帰る前にプールに寄った。先輩との一方的な思い出の場所。私が学校の中で一番好きな場所。でも次の部活から先輩はいない。そう思うと我慢していたのに泣いてしまった。もう帰ろうと思っていたその時名前を呼ばれた。
私が大好きなあの声で名前を呼ばれた。
「木ノ下さん」
私はびっくりした。心臓がドキドキいってうるさい。涙が止まらない。恥ずかしい。なんで先輩が私の名前を呼ぶんだ。そんなことを思っていると、
「えっと、どうした?」
どうした、はこっちの台詞だ。
「先輩、女の子に涙の理由
なんて聞かないでくださいよ。」
私は少し笑いながら言った。

10/11/2022, 8:53:47 AM