【始まりはいつも】
いつも通りに目を覚まして、まずは状況の確認を行う。部屋の家具の配置、鏡に映った自分の見た目での年齢、総合的に判断すれば、4歳前後だろう。カレンダーを確認して、今月が3月であることを確認した。やはりそうだ。つい、先月が誕生日だったらしい。となると、今回は、両親の離婚イベントを踏むのか。今までになかったパターンだ。
頭の中で計画を立てつつ、リビングへと足を進める。浮気をしたという父と、探偵を雇ってこっぴどく断罪した母。その二人の決着は、今でも覚えている。今年の6月だ。
「……あら、もう夜も遅いわ。早くお眠り、私の可愛い子。」
母は、私の姿を視認すると、優しく微笑む。しかし、その目の下にはうっすらとくまが浮かび、私のことを視界には入れるものの、もっと遠くを眺めているような気がした。
こんなにも参っていたのか。この人が。あんなに強い、私の母が。初めての人生で、この当時のことはあまり覚えていないが、きっと、この優しさに騙されて、何も気づかず、自分は笑っていたような気がする。じゃなければ、両親の突然の離婚なんかにあんなにショックを受けなかったはずだ。
そうだ。今回は、まだ離婚はしていない。あの地獄みたいな毎日のきっかけはまだ訪れていないのだ。これがやり直せるチャンスだというのなら、私はなんでもできる気がした。
「うん、おやすみ。お母さん。愛してる。」
母は驚いたような顔をして、気を引き締めたかと思うと、笑った。
母は、いつも不幸な人生を歩んだ。それをなんとかしたくて、ずっと祈ってた。だからだろうか。私は、初めての人生をずっと繰り返している。母が死ぬことがトリガーなことはわかっている。今回は、不幸になんかしてやらない。絶対に。
(この後、離婚したらとりあえずは幸せな母(娘ちゃんはそう思っていない)と、絶対に不幸にさせたくないため、和解に持っていきたい娘とで戦いが起こるんですね、わかります。相互不理解。昨日のお題消費できてなかったので、ちょうどよかったですね【すれ違い】)
10/20/2024, 10:37:01 AM