おきた

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今日、ついにあなたを手放しました。…手放すと言うより、自然に還した、と言った方が適切でしょうか。
一周忌を迎えてもなお、あなたの言葉通りにできなかったのは私の弱さです。合わせる顔がありません。
…光陰矢の如しとは言いますがまさにその通りですね。人間なんて一丁前に物を語るくせしてすぐに死んじまう。でも、一緒に過ごした数十年はとにかく幸せでした。

粉になったあなたの骨が風にザアッと巻き上げられて、半分ははるか遠くの空へ消え、もう半分はしばらくしてやがて海へ落ちていくのを日が暮れるまでじっと見ていました。高熱にさらされてからからになった骨を入念にすり潰しておいたので、面白いほどよく溶けた。
釜の中はひどく熱いから水が恋しいでしょうし、海を見た事がないと言っていたので海を選んだのです。
あやめ色の海水に私の顔が映って、あなたが隣にいたら…と思ったけど、あなたは海になったのをすっかり忘れていました。とても綺麗よ。

気づいてましたか。星の光はキラキラチカチカ揺れ動いているのです。何万年も前の光が、今になってようやく地球に届くの。なんて神秘的なんだろう。
そういえば、骨には炭素が含まれるでしょう。それを利用して遺骨をダイアモンドに加工する人が居るらしいけれど…私はそんな事しません。あなたの放つ光は一万年後もきっと私を焦がすだろうから。
あなたがダイアモンドに成り損なっても、あなたが生きていた事はきっと忘れません。

だから、許して。まだ動くあなたを燃やした事。
愛してたの…………

4/13/2023, 12:20:51 AM