「『書く習慣』3年目の2025年、シーズン3に向けて、仕込んでおきたいネタがあるワケよ」
要するに、変わらぬ日常の連載風で投稿を続けてきているこのアカウントにも、
1年ごとに何かの「変わったもの」を入れたい。
某所在住物書きは、遅れに遅れた投稿予定時刻を確認して、ため息をひとつ。
久しぶりの17時投稿である。普段は正午から14時にかけての投稿なのに。
「『保全』と『多様性』。『独自性』と『改革』。
新しいギャグパート。……うん」
本格始動は来年だけどさ。 物書きは言う。
それでも「匂わせ」を仕込みたいと、今回のお題に滑り込ませた「このアカウントの一次創作」が、
なかなか、実際に書くと、難しいハナシで……
――――――
新卒ちゃんと一緒に、今年最後の外回りをしてたら、突然「誰か」に絡まれた。
「縺吶>縺セ縺帙s」
言葉が分からない。
見た目は日本人っぽいのに、話す言葉が、英語でもフランス語でも、中国語でも韓国語でもない。
完全に、聞いたことがない言語だった。
「鬆倅コ矩、ィ縺ッ縺ゥ縺薙〒縺吶°」
すごく困ってそうな顔してるのは確かなんだけど、
こっちも、相手が何に困ってるのか分からないし、
頼みの綱の翻訳アプリも、相手の言語を検出できなくて全然役に立たない。
新卒ちゃんは真面目で、優しいから、身振り手振りでどうにか意思疎通しようとしてる。
「繧ォ繝舌Φ繧堤尢縺セ繧後∪縺励◆縲ゅ◎縺ョ荳ュ縺ォ鄙サ險ウ讖溘′蜈・縺」縺ヲ縺セ縺励◆縲りェー縺ィ繧りゥア縺後〒縺阪↑縺上※蝗ー縺」縺ヲ縺励∪縺」縺ヲ」
日本人っぽい人の、完全に日本語じゃない救助要請は、なおも続く。
「蝗ー縺」縺溘↑縲ょ峅縺」縺溘↑」
多分、「困った困った」みたいなことを言ってるんだろうけど、こっちもどうしようもない。
なおもジェスチャーで頑張ってる新卒ちゃんを引っ張って、戦線離脱しようと思ったら、
私達が離れる前に、目の前の人が、
突然恐怖に血相変えて、走って逃げちゃった。
何があったんだろうって、振り返ろうとしたら、
私達の横を「私の推しゲーの推しカプの、左側の方の人」によく似た制服と姿と声の人が、スッて通り過ぎて走っていって、
逃げちゃったひとに、声を張り上げた。
「縺昴%縺ョ驕墓ウ墓ク。闊ェ縺ョ逡ー荳也阜莠コ縲∵ュ「縺セ繧翫↑縺輔>」
「……なるほど」
「推しの左側」によく似た人は、必死に逃げる例の人を、息も切らさず走って追っかけてる。
「アレだ。私の推しゲーの実写PV撮影だ」
そういえば公式が、今月の最初あたりに「今回の一件」と関係ありそうなアップデートを、チラっとほのめかしてた気がする。
私は理解したけど、新卒ちゃんは私を見て、キョトンとして、首をかっくり。深く傾けた。
――…「私が推してるゲームの味方サイドは、『世界線管理局』っていう組織なんだけどね」
今年最後の外回りを終わらせた帰りに、
例の日本人っぽい別言語話者さんのことを、あんまり新卒ちゃんが気にしてるみたいだったから、
ちょっと寄り道して、喫茶店に寄って、
私の推しゲーの宣伝をしつつ、「今回の一件」のことを教えてあげた。
「この管理局の敵対組織が、『世界多様性機構』っていうところなの」
カフェモカ飲みながら私の話を聞いてる新卒ちゃんは、更にきょとんとして、更に首が傾いた。
「ひとつの世界を、独自性を保って、なるべく『変わらないように』保全するのが管理局」
ソシャゲをタップして、私は続けた。
「それに対して、『変わらないものはない』って、
ひとつの世界にたくさんの世界の技術を導入して、そこを発展させていこうってのが多様性機構」
ほら、これ。
ヘルプ画面の用語解説を、新卒ちゃんに見せた。
「多様性機構は、優良物件な世界に、異世界の移民難民を違法に連れて来るの」
「連れて来られた異世界の人、どうなるんですか」
「そのへんを、今回の大型アップデートで深堀りしていくっていうウワサ。多分全然話が通じなくて、さっきの私達みたいになるんだと思う」
「困ってた人を、追いかけてたのが、機構の人?」
「違う違う。管理局の方。違法渡航許さない方。
多分どこか、私達が気づかなかった場所で、カメラ回してPV用の動画撮ってたんだと思う」
「動画撮るなら、事前に私達に許可取りません?」
「私、アプリユーザーだもん。不要不要」
「そうじゃなくて……」
なんだろう。なんて言えば良いんだろう。
新卒ちゃんは真剣に、さっき会った別言語話者さんと「私の推しゲーのコスプレさん」のことを悩んで、悩んで、結局答えが出てこない。
「ホントに居るワケないじゃん。異世界人なんて。
令和だよ。科学万歳の現代だよ」
「そうですけど……」
どうせ明日の朝にPVが発表される予定だから、写ってたら報告するよ。
私はそう言って、会話を切り上げて、自分のフラペチーノを飲み干した。
仕事が終わって寝て起きて、朝に私の推しゲーのPVが予定通り公開されたけど、
写ってたのは実写PVでもなければ、「異世界の移民が現地の人に話しかける」って構図でもなく、
じゃあ、
私達が昨日出会った「別言語話者さん」と「推しカプの左側によく似た人」は誰だったんだろうって、
最終的に、大きい謎だけが残った。
科学万歳の現代だけど、
怪奇とか、不思議とかは、まだ健在らしい。
12/27/2024, 8:02:33 AM