リュウジ07

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お題:溢れる気持ち
2作目

「あなたにとっての溢れる気持ちはなんですか?」と訊かれて、真っ先に思い浮かぶものがあります。

それが、初恋、という感情です。
今はもう疎遠になってしまったけれど、小学生の頃私には幼なじみがいました。
引っ込み思案だった私を外に連れ出してくれた、ひとつ年下のあの子。

当時は一緒に遊べることが嬉しくて、一緒にいることが嬉しくて、全く気付いていなかったけれど。
あの子に辿り着けるものが何一つないって気がついたのは、あの子が引っ越してしまってから。
連絡先も、引越し先も分からなくて、知っているのはあの子の名前だけ。
そういえば漢字でどう書くかも、分からない。
だから逢う方法は、もう無くて。

ああ、どうして大人になって思い出すんだろう。
あの子と一緒にいた時のこと、あの子に抱いていた感情。
あれが初恋だったなんて、大人になってようやく気付いた。

あの子の顔を、声を、過ごした時間を思い出すと胸がキュッと締め付けられて、体温が急上昇するような錯覚。
会いたくて会いたくて、訳もなく叫びたくなって、思わず口を塞いで。
夢に出てきたら2度寝して、また夢で会えるかなんてバカなことを考えるような。
そんな。


こんなに溢れる気持ちが初恋だったなんて、今更気付きたくなかったな。

2/5/2024, 11:36:37 AM