幸せに
ゆらりと波打つ水面。
舟の上で、水を揺蕩う一人の男を見つめる。
微かに胸が上下しているところを見ると
生きてはいることがわかる。
たまに手を緩く握ったり閉じたり。
何かを探すように腕をざわつかせる。
パドルで彼を突いてみる。
すいっと更に沖の方へ流れていく。
髪の毛が水面を滑る。
自分はパドルを握りしめ
未だ煙の上がる都市へ目を向ける。
まだ青い空と海。
彼の望んだことは何でも叶えてあげたいから。
これが君の望みなら。
どうか幸せを享受して。
いつか還ってきたときは、教えて。
しあわせに。
4/1/2024, 4:27:12 AM