友達の思い出、と聞いて頭に浮かぶのは、唯一結婚した友人の事だろうか。
俺の周りは所謂オタクばかりで、異性の気が見て取れる様な奴は全くと言って居なかった。勿論皆見目は悪くは無いし、人間としても面白く、良い奴ばかりなのだが。つまり恋愛よりは推しが大切なのだ。此れには世の中のオタクの半分が頷いてくれると思う。
因みに俺はそこそこ恋愛をこなしてきた訳だが、そもそも同性愛者であるので、大っぴらに話をする事も無く、勿論結婚やら何やらも出来ないので論外としておこう。
前述した友人は、仲の良いグループの中でも服装等のセンスが良く、さっぱりとした性格の女性である。高校からの付き合いで、社会人になってからは暫く連絡は取っていなかったが、SNSで様子は見ていたので疎遠になった感じは無かった。ただ、SNSでは推しへの萌えを語る彼女しか見た事が無かったので、結婚式の招待が届いた時には酷く驚いたものだ。何せ、全く匂わなかったのである。相手の男性の存在が。まあ元来謎の多い女性ではあったし、彼女が決めた相手ならば悪い者では無いだろうという、良く分からない確信もあった。
然し結婚式など、四半世紀と数年生きてきて初めての経験であるし、更には大事な友人である。謎に張り切ってしまった俺は、8万のオーダーメイドスーツを買った。因みに俺はXジェンダーである。実際ドレスばかりの会場では些か浮いていたが、男性と形式は同じなので失礼では無かった様に思う。
式で見た彼女は、純白のドレスに身を包み、見知らぬ男性の横で少し緊張した面持ちで挨拶等をこなしていた。他人なのだから当たり前だが、皆自分の預かり知らぬ所で、新しい関係性を構築していく。それに少し寂しい様な気持ちになりながら、新しい門出を心から祝福した。尚、見慣れない服装ではあったものの笑った顔は何時もの彼女であったし、式の曲に昔から大好きなアーティスト(あまり結婚式向きでは無い)を選んでいて、変わらないものもあると安心したりもした。仲良しグループの高校時代の写真が出てきた時は、何処から持って来たんだ!?と少しダメージを受けたが。十何年も前の写真など、恥ずかしさしか無い。あの頃より垢抜けていると良いのだけれど。
因みに、その仲良しグループのうち、俺と彼女以外の二人が喧嘩別れしているのだが、其れはまた別の話。
7/6/2023, 12:01:01 PM