「はいどうぞ」
渡された缶コーヒーは温かく、収まり始めていた涙腺を再び刺激した。
ずび、と鼻を啜る。缶の温もりを抱きしめ、涙を溢す。
「相変わらず、泣き虫さんだねぇ」
くすくすと笑われる。
仕方がないだろう。分かっているというのにあえて指摘するなど、タチが悪い。
涙目で睨みつけながら、缶の蓋を開けた。ぷしゅと音を立てて、コーヒーの苦い香りが漂い始める。
「まあ、いいや。とりあえず、コーヒーが冷めないうちに飲んでしまいなさい。話はそれからにしよう」
そう言われ、おとなしく缶に口をつけた。ほろ苦い味が今の自分のようで、苦さを嚥下しながらまた泣いた。
9/28/2025, 9:14:40 AM