川柳えむ

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「だーかーらー、一人でいたいって言ってんだろおぉぉー!」
「いーやーだ! 一人になんかしないー!」

 誰にだってあるだろ? 一人になりたい瞬間が。それは落ち込んでいるからだったり、ただ息抜きをしたいだけだったり。
 だが、この面倒臭い友人は、いつも私を一人にさせてくれない。どれだけ一人にさせてくれと伝えても、絶対に私から離れない。
 心底鬱陶しい。でもほんの少しだけ嬉し……いややっぱり鬱陶しい。そして面倒臭い。

 逃げ回っていたが、全然諦めてくれる様子はない。
 一旦立ち止まって、友人に無駄な質問を投げてみる。

「だから、一人でいたいって、何度言ったらわかってくれるんだ?」
「こっちも、一人にしないって言ってるの、何度言ったらわかる? どこか行くなら一緒の方が楽しいし、もし気持ちが落ち込んでるのなら一緒に落ち込むし、一人にしたくない。一人にする必要がない」
「誰だって一人になりたいことあるだろ」
「いやおまえと一緒にいたいし」

 どれだけ説得しても引かない。
 こうして、いつからか帰る家も一緒になって、本当に人生のほとんどを一人でいることができなくなってしまった。
 最初からそういう運命だったのかもしれない。いや、これは運命というよりも、友人――もう友人ではないが――の粘り勝ちか。
 一人でいるってことがこんなにも難しいなんて思わなかったよ。もう一人でいたいとも思わなくなってしまったけどね。


『だから、一人でいたい。』

7/31/2023, 8:25:44 PM