ストック

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私はとある王国の王。
先王が崩御して、16歳で王位を継いだ。
この玉座を、そして王国を守るために、私は強くあらねばならない。
王国の希望でいなければならない。

そんな私を支えてくれたのは、代々王国に仕える騎士団長だった。
彼は私に剣術を教え、王としての在り方を教え、そして人としての温もりを教えてくれた。
王としてではなく、人間としての私を受け止めてくれるかけがえのない存在だった。

その彼は今日、戦死した。
死に目に会えたのはせめてもの救いだった。
彼は最期まで私を案じてくれた。

私は彼を看取った後、すぐに副団長に彼の葬儀と軍の再編を命じた。
葬儀では騎士団長としての彼の功績を称え、「騎士団長に報いるため」と彼の死を皆を鼓舞するために利用した。
私の演説に、騎士達や国民達からは感涙と喝采が上がった。

私はその熱気を背中に感じながら、誰にも告げずに騎士団長の部屋へ向かった。
もうここに彼はいない。
残り香を感じた瞬間に、頬を涙が伝っていくのがわかった。
私は部屋に鍵を掛けた。

王は、皆に涙を見せるわけにはいかないから。
常に輝きを放っていなければいけないから。

しかし、私は一人の人間として彼の死を悼みたかった。
だから、今この瞬間だけは一人でいたい。

「今までありがとう。どうか安らかに」

7/31/2023, 12:10:44 PM