「あの…大丈夫ですか?」
雨で少し濡れた、歩道で雨宿りをする美しい女性に
男性は声をかけざるを得なかった。
『…大丈夫です』
女性はそれだけを言うと、また前を向いて黙った。
悲しい声だった。
男は雨の中、走り出した。それは必死に。
何が男をこんなにも引き立たせるのだろうか。
近くのコンビニでビニール傘を買い、
女性の元へ戻った。
「あ、あの…………」
『…あ』
女性の視線と声は男に向けられなかった。
《全部僕が悪かった。許してくれ》
女性の目の前には、傘を持ったびしょ濡れの男性が。
『ありがとう』
そう言い、女性は男性の傘へ入って歩き出した。
呆然と立ち尽くす俺に背を向けて。
ー雨に佇むー
8/27/2023, 3:55:51 PM