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ヒトがゴミみたいな群衆が犇めいている。
若干の安堵と共に歩幅を合わせた。
「よく転覆しないよなアレ。定員オーバーじゃん絶対」
「な。増便するとか大きいの用意するとか出来なかったのかね」
「俺等の時すら酷かった筈なのにな……」
「本当ソレ。アレばっかりはもう一週くらい早めりゃ良かったと思ったわ」
「あの一週楽しくなかった?」
「もっと早くにお前に話しとけば良かったってコト」
土の地面は裸足に痛く、結わえた手首は罪人の如く、それでも道は遠ければ、さいごとよく似た赤黒い空を見た。
「そういや先刻ちらっと聞いたんだが、アッチに行くと空飛べるらしい」
「マジ?!今言うソレ!?うーわ最後まで待ってた方が良かったって話?」
「早く行けたとしてあの群衆に潜れる?」
「嫌過ぎたわすまん、最適解だった」
「だよな」
時々天へと登る光を少し眩しく、下り坂を降りていく。今は会話する余裕のある道も、あの群衆に混ざれば無茶が過ぎた話。
「俺等が飛ぶ頃どうなってると思う?俺は新しい生物と生態系が出来てるに一票」
「星ごと太陽に突っ込んどいて?」
「ソレに適応してどうにかしてるだろ、多分」
「俺むしろ壊滅したが為に宇宙遊泳になる方考えたわ」
「なにそれ浪漫やべえ、めっちゃ良いな」
「だぁろ。……と、」
足音が一つぴたりと止まった。此処では初めて合った視線が、少しの寂しさを湛えていた。
「お前はソッチか」
「ね。そんな罪に差があったかな」
「あー……飛び降り前の遺書分でちょっと軽減されてた」
「まぁじ?書いとけばよかった」
「書く相手いたか?」
「あんた宛てに!」
「全部話しただろばぁか」
「そうだけども!」
足音が一つ止まらない。歩く速度で確実に遠くなっていく。
「先終わっても待ってるからな、今度こそ一緒に飛ぼうぜ」
「今度『も』一緒にだろバカ!すぐ追い付くからな!」
星が滅ぶほんの少し前に飛び降りた、それでも咎は軽くないらしい。
地獄の道行きで空を見た。二人で一緒に飛び降りた、焼けた空の色によく似ていた。

‹君と飛び立つ›


精一杯に考えた
その名にどれほど祈ろうか
その道行きの幸いを
その名にどれほど祈ろうか
一度たりとも呼べなかった
その名にどれほど祈ろうか
それでも確かにここにいた
大切な大切な君のこと

‹きっと忘れない›

8/22/2025, 9:26:12 AM