6/14 お題「あいまいな空」
雲ひとつない青空ならぬ、青ひとつない曇り空だった。午前中から、小雨が降ったり止んだりを繰り返している。昼まで待ったが晴れることはなさそうだ。旅立ちには微妙な天気と言わざるを得ない。
「じゃあ、行ってくるよ」
「いつ帰ってくるの?」
「いつかなぁ」
正直に言ってから、これではまずいと気づいた。
「まあ2ヶ月もすれば帰って来れるかな」
密命がある。2ヶ月で帰ってこれるはずはない。下手をすれば一生だ。
「姉ちゃん…」
不安げな弟の頭をなで、青空のような笑みを見せて、親指を立てた。
「次会う時までいい子にしてるんだよ」
「…うん!」
つられたように笑顔になる弟に、背を向けて駆け出す。振り向かない。
あいまいな空が、精一杯隠した心を映していた。
(所要時間:10分)
6/14/2023, 10:13:56 AM