「ねえ怖いよ。早く行こう。」習字の授業に見た硯に注がれた真っ黒な墨汁。夜の海はロマンもときめきも無かった。「そっちに行かなきゃいいんだ。大丈夫だよ。」「そうだけどさ…。」こいつが無駄に怖がってくれて良かった。僕も怖い。だから良かった。「お前は普通だよ。まとも。」「ええ…何?何の話?怖い話はやめてね。」この黒い水に手を伸ばしたくなったら誰かに話せよ。それは良くない時だ。「僕は話したよ。あの人に。」「うん、よかった。」夜の海
8/15/2024, 12:10:50 PM