七汐

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たまに私は記憶の海に潜る
断片的に覚えている小さな頃の思い出や、何気ない日常の海である
この海は透き通っていて、ぷかぷかと浮かぶこともゆっくり沈むことも出来る


まだ4歳くらいの頃、明け方に起きてしまった時に父が少し離れた所で寝ているのをちょくちょく見かけていた
あまり寝る時間が被ることが無かったので少し不思議な気持ちだった
父は長距離トラックの運転手をしていたため、明け方にガラケーのアラームをかけていた
ぴかぴか光る携帯、そこから流れる1000のバイオリン
全身で抱えるくらいのえんぴつがあったら何を描こうと想像しながらまた眠りについていた

最近昔の写真を大量に見つけた
楽しそうに笑う私、私をおんぶして幸せそうな笑顔を浮かべる父、私の勇姿を撮ろうとガラケーを構える兄、嬉しそうに私を抱きしめる母


少し深いところまで潜ると愛されていたのが伝わってきて心がぽかぽかするのだ


「記憶の海」

5/14/2025, 6:14:13 AM