傾月

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翌日。
休日なのをいいことに、いつもの仲間数人で集まって昨日聞いた話を検証することにした。そう「同じ所をグルグル周っていたら」についてだ。
公園でジャングルジムに登り、試しに上から2段目をみんなでグルグル周ってみたが、何も起こらなかった。ま、行き当たりばったりじゃ無理よな、となり、その後はジャングルジムに腰を下ろし、あーでもないこーでもないと意見を言い合った。そうしているうちに「同じ所をグルグル」というのが「①ジャングルジムの同じ箇所だけを周っていた」のか、「②後ろの子が前の子を真似て、様々なルートをついて周った」のか、どちらの意味で言っていたのか確認が必要だということになった。
昼のチャイムが聴こえた。誰かのお腹が空腹を告げたのを合図に、この日は解散することにした。「同じ所をグルグル」については週明けに学校で本人たちに確認しようということで決着した。
全員でゾロゾロと坂道を下っていると、下から昨日話を聞いた1年男子が走ってきた。目が合うと「家の窓から見えたから、話を聞こうと思って」と言った。昨日の話とさっき出た意見を伝えると、「俺は別にグルグル周ってないけどな」と不思議そうに言った。そして唐突に「歯医者に行くから帰るわ!また学校で!」と言い、坂を走り下りて行った。
あっという間の出来事にみんなで呆気に取られていると、ふいに閃いた。そうだ、歯医者だ。昨日話を聞いた子たちの中で、銀歯が見えている子がいた。
後ろを振り返り山を見上げると、電波塔が見えた。突然、全てが繋がった。「同じ所をグルグル」に囚われていた自分に笑った。何だそんなことだったのか。あとは確認していくだけだ。


―――宇宙(そら)からの便り [破]


         #73【形のないもの】【窓からの景色】

9/26/2023, 10:09:24 AM