前回投稿分からの続き物。
最近最近の都内某所、某隠された小道の奥に、本物の魔女が切り盛りする喫茶店がありまして、
ここのBGMのひとつを担当している不思議な不思議なオルゴールが、前回投稿分で不具合を起こし、
これを、魔法道具の対応ができるエンジニアに、ガッツリ直してもらったところ。
「おーい、アンゴラ。アンゴラばーちゃん。この俺様が直々に、オルゴール、届けに来てやったぜぇ」
エンジニアはビジネスネームを、スフィンクスといいまして、
世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織の局員。
「前金はもう貰ってあったから、残りの報酬、勝手に持ってくぞー」
チリリン、ちりんちりん。
スフィンクスが喫茶店のドアを開けると、
美しいドアベルが、スフィンクスを出迎えました。
店内はちょっと寂しそうな音の景色で、
スフィンクスが直してくれてオルゴールのメロディーを、今か今かと待っている様子でした。
ところで店主の魔女、アンゴラは、どこでしょう?
「あらあら、ツバメ、あらあら、まぁまぁ」
テーブル席の奥のあたりから、店主の声がします。
「そんなことしちゃって、バレたら大変よ」
なんだなんだ、何がどうした、
スフィンクスが声のする方、その天井を見ると、
若いツバメが喫茶店の店内に、ひとつ、小さな巣を作っておりました。
「仕方無いわね」
再度、魔女の優しい声がしました。
「二人だけの、秘密よ」
なーんだ。「そっち」のツバメか。
スフィンクスは納得して、頷きました。
というのもスフィンクスの職場・世界線管理局は、動物由来のビジネスネーム制が敷かれておって、
法務部に、「ツバメ」という執行課局員が、事実として勤務しておるのでした。
よってすなわち
法務部のツバメが
魔女のアンゴラの喫茶店に来店して
何か「あらあらまぁまぁ」な職務怠慢を
魔女と当人の「二人だけの秘密」として
見逃してもらっているワケではなかったと。
「アンゴラー!勝手に代金、持ってくぜぇ!」
チラホラあっちこっち、スフィンクスが見回しますと、ちゃんとカウンターに、オルゴール修理用の後払い分が整えてありました。
「ひとまず、」
ひとまず、来月か再来月にでも、一旦経過確認に来るから、覚えておけよ。
スフィンクスがそう続けようとしたときでした。
「らいげつ……」
スフィンクスは、ツバメの巣の、下の席の客と、
ばったり、目が合いました。
彼は、スフィンクスと同じ職場の局員でした。
彼は、バニラクリームの無糖シェークフラッペに、
この店の売れ筋のひとつであるところの、希釈用エスプレッソベースを、
たぷたぷ、3杯分ほどブチ込んで、
それをストローで、丁寧にかき混ぜておりました。
ガッツリ視線がぶつかりました。
スフィンクスと彼は数秒、互いにフリーズして、
数秒後に互いに、示し合わせたように、
それこそ「二人だけの秘密」のように、
無言で、視線を外したのでした。
5/4/2026, 8:17:31 AM