言葉はいらない……ただ
悲鳴のような歓声の中、まるでスラムダンクみたいだと俺は思った。
1点差。
第4クオーター、ラスト5秒。
時間はない。
奥に切り込めない。
ここからシュートを打つしかないのか。
その瞬間、目の端にあいつが走り込んでくるのが見えた。そこからはスローモーションのような記憶だ。言葉はいらない……ただ体が動いた。
受け取れ。バックビハインドパス。
わずかにディフェンスの動きが遅れて、あいつにボールが渡った。
今だ!
あいつはディフェンスの腕を強引にすり抜けて、体勢を崩しながらゴールに手を差し伸べるようにシュートした。
「行けえっ!!」
空中に浮かんだボールは、きれいな放物線を描いて、ゴールリングに吸い込まれていった。
同時に試合終了のブザーが鳴る。
わずかな静寂の後、轟くような大歓声が湧き上がった。
スコアボードは69−70。
逆転だ。勝った。
俺はコートに倒れ込んだ。もう一歩も動けない。でも最高の気分だった。
口を開いて荒い呼吸をくり返し、今も病院にいるあの娘(こ)を思う。
なあ、俺勝ったぞ。だからお前も頑張れ。手術は必ずうまくいく。
男子バスケット、頑張って欲しいです!
8/29/2023, 11:12:13 PM