たなか。

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【最初から決まってた】【蝶よ花よ】

 分かっていたことじゃないか。全て、最初から決まってた。今更なんだ。さぁ、手で雑に涙を拭って顔を上げるんだ。手に触れる布が湿って冷たい。私、なんで泣いてんだっけ。数時間前の出来事に意識を向けて思い出す。あー、振られたのか。また、振られた理由は同じ。嘲笑うなら嘲笑えばいい。蝶よ花よ、私の何がいけなかったというのか。いや、分かり切っていることか。人は人じゃないと恋愛をしたくはないらしい。最初の方は受け入れるよ、なんて言葉で私を安心させるくせに少し経ったくらいのところで毎度私を見限るんだ。
「やっぱり俺らは同じ種族の人と恋愛をするべきだと思うんだ。」
 そんな言葉。最初から諦めていたことではある。それでも、まだ希望があると思ってしまったんだ。呑み込めない言葉を無理に飲み込めば飲み込むほど喉が詰まる、息が苦しくなるんだ。分かっていたことでも分かりたくはない。
「同じ種族の恋愛がつまらなそうって言ってたのはそっちなのにね。」
 誰に言うでもなく独りの葛藤のため吐き捨てる。何度呪ったことか。いくら変わりたいと願ったってもらった身体を捨てるのは怖かった。誰か少しだけ受け入れてくれる人がいればいいのに。

8/9/2023, 2:46:24 AM