いろ

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【星座】

 偉業を成した英雄は神の手により天へと召し上げられ、星座として永遠にその存在を刻まれる。夜空に輝く星座の一つ一つには、遠き過去を生きた英雄たちの物語が秘められているのだ。ああ、だけど。
 目の前に広がる血の海。私がこの手で葬り去った人たちの骸が山と折り重なる。神は私のこの行為を重罪だと断じるだろうか。それとも戦における英雄として認めるのだろうか。色濃い鉄の香りが神経を麻痺させる。ああ、血の匂いに酔ってしまいそうだ。
「――お疲れ」
 耳朶を打った涼やかな声。戦場の熱気に決して飲み込まれぬ高潔なる王。彼の存在を認識した瞬間、脳が冷静さを取り戻した。
 背後を振り返り、恭しく膝をつく。私の唯一の王。この命の全てを捧げると誓った方。貴方が認めてくれるならば、私は神の許しなどいらない。星座になど祀られなくとも世界でたった一人、貴方が私の功績を覚えていてくれるならば、それ以外など私は何一つ望まないから。
「やっぱり君は頼りになるね」
 微笑んだ王のその言葉が、私にとっては天へと召し上げられるよりもよほど誇らしい栄誉だった。

10/5/2023, 10:37:34 PM