三羽ゆうが

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夜、浴衣を着ているカップルとすれ違う。甘い香水の匂いと汗の匂いが混ざって吐き気がしそうだ。

ゆっくり肩に手を添えられた感覚がして、一瞬体がぴしりと固まる。

「兄ちゃん、落し物」

「……へ、あぁ……すんません」

もっと声を出しながら肩を叩きでもしてほしい。そんなねっとり触られると幽霊でもなんでも出たのではないかと思ってしまう。……なんてグチグチ思いながら振り返る。

落し物、と差し出されたそれは見た事ない異様なナニカで、声の主の腕は透けていて顔も目なのか口なのか分からない化け物だった。


恐怖から一気に足が走り始める。あの異様なナニカから逃げるために。辺りを見回せば、山の上まで続く小道を見つけた。足が動く限り、小道をかけ登っていく。



小道の先にあったのは古びた神社。いかにもお化けやら狐やらが出てきそうな雰囲気を纏っている。

「……はぁ、はぁ……ちょ、きゅうけ……」

自分を落ち着かせるために独り言を話しながら少し神社を散策してみる。背後でポキリと小枝を踏んだ様な音がして咄嗟に振り返ったがそこには何もいない。

「……え、何そういう展開?無理なんだけど……」

誰に向けて話す訳でもなく、怖さを紛らわせる為に独り言を話し続ける。

「……だれかぁ〜、いたりとか〜……します?……なんてぇ……あはは……」

ゆっくり肩に手を添えられた感覚がして、体がぴしりと固まる。こんな所に人がいる訳ない、はずなのに。

「兄ちゃん、落し物」

さっき聞いた声と同じ声がして、冷や汗がどばり。声の主を認識する前に恐怖からばたりと失神してしまった。


「……さん!お兄さん!」

目が覚める。ゆっくり目を開けると、休憩スペースのテントで横になっていた。

「大丈夫です?倒れられてましたけど」

「……大丈夫っす……」

夢か。どこまでが夢?どこまでが、

「……兄ちゃん、捕まえた」

そんな声がして喧騒の中に悲鳴が響き渡った。


『お祭り』

7/28/2024, 12:47:49 PM