Isao Tominaga

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ただいま、夏。


風鈴の音が 遠く揺れて
陽炎の向こう 誰かが笑ってる
あの日の匂いが 胸にふいに咲くたび
心の奥 小さな扉が開く

好きだったTシャツ 少し色褪せたまま
まだ捨てられずに 引き出しの奥に
"また会えるかな"って 言えなかった言葉
セミの声が かき消した午後

ただいま、夏
あの空に もう一度帰りたい
君の声も 君の影も
波のように胸に寄せる
さよならさえ きっと言えずに
季節だけが大人になる

海辺の写真は 今もぼやけたまま
ピントが合わないのは 時間のせいかな
"またね"の代わりに 手を振ったあの夕暮れ
今でも夢に出てくるんだ

あの頃の私が
もしもここにいたら
君にどんな顔で
「おかえり」って言うかな

ただいま、夏
焼けた砂 裸足で歩いたね
手のひらのぬくもりさえ
忘れたくても忘れられない
胸の奥で 何度も揺れる
戻れないのに、また巡る

“好きだった”じゃなくて
“今も好き”って言えたら
少しは何か 変わったかな?
青い空が ただ笑ってた

ただいま、夏
もう一度 君に会いたくなる
過ぎた時間も 切なさごと
この胸に刻みつけて
またいつか この場所でそっと
「おかえり」って笑えるように

8/4/2025, 10:19:29 AM