ストック1

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「この場所で……決着をつけよう」

ラスボスAが城の前の広場で、落ち着いた口調で俺に告げる
大切な人を救えずに闇堕ちした悲しきラスボスAは、しかし俺の求める敵ではなかった

「悪いけど、ハメ技で倒させてもらうわ」

「なに?」

俺はそのままラスボスAが行動する暇も与えず、数ターンでハメ殺しをして倒した

「この私が、こんな容易く討たれるとは……これも復讐心の代償か
カタリナ、今、君のもとへ……」

情緒もなにもないが、これでいい
俺がラスボスAを倒すのは7回目なのだ
もう一度やり直さないといけないのに、ラスボスAに苦戦している場合ではない
次の周回だ
ラスボスは分岐によって5人のうちの誰かに変わる
ラスボスAはカタリナが途中で死亡した場合にラスボスになる
今の所、他のラスボスに関しては、特定のイベントを達成前にある事実を知ってしまった場合にラスボスになるラスボスC、俺が特定の人物を殺害するとラスボスになるラスボスD、俺が特定勢力に入るとラスボスになるラスボスEと戦闘済み
しかしラスボスBとだけ戦っていない
フラグ管理がシビアなのだ
ラスボスAの条件を、カタリナ死亡以外すべてを満たした時、ラスボスがBになるわけだが、カタリナが死ぬと当然、ラスボスはAになる
そして、カタリナはうっかりしてるとすぐに死ぬ
どんだけ死神に愛されてるのか、と言いたくなるくらいちょっとしたミスで死ぬ
ラスボスA、B分岐ルートでの世界のカタリナへの殺意が半端ない
おそらく、俺はラスボスAの次にカタリナの幸せを願っている
だって、そうしないとラスボスBと戦えないから
そして、厄介な事実がここにある
カタリナの生死とラスボス確定を知るタイミングは、ラスボス戦なのだ
俺は毎回、空から城の前の広場に降り立つラスボスの声と顔を祈るような思いで聴き、見る
そして毎回カタリナが死んでいて、ラスボスはAになるこの地獄
正直俺は嫌になりかけたが、今度こそはBと戦う
今まで取っていない選択肢の存在に気づいたのだ
普通、カタリナを生存させたければ絶対に取らないであろう選択肢
この俺が直接、カタリナを殺害する選択肢だ
矛盾するように見えるかもしれないが、俺はピンときた
この選択肢の出る場面が、明らさまに不自然なのだ
今まで守る、助ける選択肢しかなかったのに、ここに来て突然、カタリナには世界にとって不都合な部分があるから、これ以上カタリナを巡って争いの輪を広げないようにと、俺が殺す選択肢
俺はそこになんらかのトリックを感じ、一縷の望みをかけて選択した
崩れ落ちるカタリナ
叫ぶラスボスA
退散する俺と仲間たち
俺は魔法をカタリナへ撃ったわけだが、派手な代わりに、気絶させるだけで怪我もしない程度の威力の電撃
これで周りはカタリナが死んだと思うし、カタリナのもとへ駆け寄ったラスボスAだけはあとで生存に気づき、どこかへ潜伏するだろう
完璧だ
ラスボスAはラスボスではなくなる

そして、運命の時

「この場所で……決着をつけよう」

ラスボスAと同じセリフを言っているが、声も姿も異なる
世界を救うため、カタリナを犠牲にしようとした男
そいつがラスボスBだ
AルートではラスボスAに復讐で殺される
ようやくBルート

「この時を待っていたぜ」

俺は気合を入れて、初めてラスボスBとの戦いへ臨むのだった

2/11/2026, 11:06:38 AM