「七夕の話って知ってる?」
不意に、恋人が言ってきた。
「七夕、ですか?」
昔、彼にもらった本に書いてあった内容だと、織姫と彦星という真面目に働く若者たちがいて、神様がそれに感心して出会わせたけど、二人共お互いを好いている余り、仕事をやらなくなったので、神様が間に川をかけてしまったので、会えなくなったが、年に1回真面目に仕事をしたら橋がかけられる、というはなしだったはず。
その時、二人で私達みたいじゃない?と彼が言っていたから、僕が知ってるのは、彼は知っているはずなのに…。
相変わらずよくわからぬ方だ…、と心の中で首を傾げるとこちらの思いを見透かしたように言った。
「実はね、その川って渡ろうとすれば一応渡れるらしいよ。」
えっ、と思った。ならどうして2人は渡ろうとしないのだろう。
「その年に1回を楽しみにしながらら働きたいかららしいよ」
僕は驚いた。
まさかそんな話もあるとは知らなかったからだ。
「これも、私たちに似てるね。」
そう微笑んだ。
今日は、5回目の一年に1回の逢瀬だ。
彼が、僕にキスを落とした。
7/7/2024, 11:17:52 PM