最悪
「今日はさいあくな日だったよぉ。」
珍しく父が僕の習い事のお迎えに来てくれた時に、僕は父に言った。
僕は父が苦手だった。今よりはまだマシだったと思うけど、それでも久しぶりに話す父との会話にとんでもなく戸惑っていた。
その日は確かに「さいあくな日」だった。
少し寝坊したし、先生に挨拶できなかったし、ともだちに悪口を言われたし、みんなの前で褒められたし、今何話せば良いのか分からないし。
少し小走りになりながら、お粗末な脳みそをフル回転させ、話す話題について沢山考えていた。
沈黙が気まずい。だから少しだけ、最近覚えた言葉を使いたくなってしまった。周りに合わせたくなったのだろう。
「お前、最悪なんて言葉を使っているのか。そんな言葉、軽々しく使うんじゃない。」
うん、知ってる。
最悪なんて、言ったこともなかった。軽々しく言える言葉じゃないと思っていた。
でも、普通になりたかった。お父さんに、普通だと思われたかった。
その後なんて言われたかは覚えてないけど、どうせいつもの口癖が飛んできたのだろう。
俺はこの最悪な日を、ずっと忘れない。
6/6/2024, 2:42:24 PM