バスクララ

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「織姫様と彦星様、子どもの頃は可哀想だと思ってたのよ。一年に一回しか会えないなんて……ってさ」
 夜空を見上げながら妹が呟く。
 俺は内心ふーんと思いつつも、とりあえず質問をする。
「今は違うのか?」
「一年に一回も会えるなんて羨ましいじゃない。
そうは思わない?」
「お前の場合、友達と会わなさすぎなだけな気がするけどなあ……」
 妹はかなりの出不精で、仕事以外の日は基本的に家に引きこもっている。
 高校生の頃はそんなでもなかったような気もするが元々そんな性格だったのか、家の居心地が良すぎるせいか……
 少し前妹は『私は家のかたつむり』と言っていた。
 残念ながら俺にはよくわからなかったが、わかる奴にはわかるのだろう。たぶん。
「……だって遠いし」
「電車で一駅の距離を遠いとは言いませーん」
「うるさいなあ……。
あっ、そーだ。兄貴は願い事何にした?」
 話題を露骨に逸らされたが、さっきの話を続けると嫌われてしまうに違いない。
 だからあえて新しい話題に乗っかることにした。
「健康第一」
「切実だねえ。わかるけど。
私はねえ、どこ◯もドア、もしくはタ◯コプターが開発されて私の生きてる内(できれば数年後)に発売されますようにって書いた」
「欲張りすぎだし自分で歩け!」
 妹は不満げな声を出していたが俺はそれを無視した。
 ……しかし妹の願い事、何らかの奇跡やら手違いやらが起こって実現しないかなあ……
 俺も使ってみたい……

7/7/2025, 3:21:10 PM