きらきらと、薬指の根元が光る。
「えへへへへへ……。」
だらしないとわかっていても、にやけた顔を止めることはできなかった。
「嬉しそうね。」
友人が呆れながらに言う。そんな友人の指にも光るもの。デザインは違うが、用途は同じもの。
「そっちだって嬉しそうなの、わかりますよ!手持ち無沙汰になるたび撫でてますもん!」
見てますよ!と手で双眼鏡を作ると、ふわりと友人は笑う。滅多に笑うことのない、彼女の笑顔は相変わらず綺麗。
「苦労して攫ったんだもの。感無量よ。」
「わあ、台詞だけ聞いたら悪い人。」
実際は相思相愛らしいが、いつまでも煮え切らない相手に友人が実力行使に出たらしい。クールな彼女にそこまでさせる人がどんな人か気になるが、まだ紹介してもらえていない。
「もう少し囲って、彼に『あなたは私の』って覚えさせてからね。」
「それ、よそで言っちゃダメですよ。捕まっちゃいそう。」
私の言葉を聞いて、ふふ、と笑う友人は美しい。
「私は自分に正直なだけよ。あんたの彼と違ってね。」
「……? 私は囲われてませんが……。」
何も制限されてない。友人のように独占欲で縛りつけたりされたりもしない。
「気付かないのも幸せでいいかもね。」
「何の話をしているんですか?」
いまいち噛み合わない会話に、友人は頭を撫でてくる。彼女はたまに難しい話をしてくる。
むぅ。と不貞腐れてるとさらに頭を撫でられた。
「ほら、あんたの王子様から着信よ。」
チカチカと光る携帯電話に、慌てて友人に一言言って外に出る。
「飽きっぽいあいつがここまで執着してるのに気づかないんだもんね。」
大好きな人との会話に夢中だった私にの耳に、友人の呟きは入らなかった。
【True love】
7/24/2025, 8:59:44 AM