案山子のあぶく

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◎落ちていく
#37

ここが何処かなど知らないが。
自分が何者かも知らないが。
腕の中に倒れ込んでいるこのヒトが誰なのかも知らないが。

この口にこびり付いた液体がなんなのか、この感情がなんなのかは、知っている。

「腹減った」

自身の欲望のままに咀嚼した肉は懐かしい味がした気がした。

「まだ、足りないや」

死にかけの獣のような足取りで、
残りの獲物を求めてかつてのクルーは歩き始めた。

11/24/2024, 7:47:58 AM