彗星

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題:ありもしない(ワルロゼ恋愛)

 一度だけ、空を飛んだことがある。
 ……ように思っただけ。
 本当は、ありもしない翼を広げて落ちただけなんだけれど。
 その時、私の体を受け止てくれた人がいた。
 それが、紫の彼ーーワルイージさん。
 受け止められたその瞬間、心臓がトクンと音を鳴らした。
 そして紫の彼は、
『大丈夫か?姫さん』
 と言った。
 さらに心臓は煩くなってーー。
 自分が恋をしていることに気づいたのは、天文台に着いた頃だった。体中が、熱かった。
 後でバトラーに相談したら、ニヤニヤされた。
 それからはちゃんと空を飛べるように、飛行魔法の精度を上げた。
 でも時々、こんなことを思う。
 ーーまた、受け止めてほしいな。
 と。
 でもそれは仕方のないことなのだと思う。
 恋をした瞬間、今まで味わったことのない感情が押し寄せてくる。
 なぜかドキドキする。
 最初はわからなくとも、後で理解し、恋だと気付く。
 私はあの時の透明な羽根に感謝している。

お題『透明な羽根』

11/9/2025, 12:59:36 AM