緑川 悟

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いつの間にか貴重になってしまったもの、を挙げるならば秋風は欠かせないだろう。

乾いてて、涼しくて、それでいて身が凍えることもない。こんなに気持ちの良いものはない。

だけれども最近はすっかり夏と冬の境目もなくなり、このような秋風は贅沢品となってしまった。思えば馬が肥ゆるような高さの空も、どこか記憶の中にしかない気がしてならない。

彼方のうろこ雲を眺めて木々がさざめいたら重い腰を上げて外へ出てみよう。秋風を吸い込まずして、冬を迎えたくはない。

11/14/2022, 3:43:03 PM