sairo

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赤や茶色の葉で覆われた道。見上げる木々の葉は、殆どが散ってしまった。
今日もまた、待ち人は来ないのだろう。約束したことすら忘れているのかもしれない。

「嘘つき」

寒さに悴む手に息を吹きかけ温めながら、来ない相手に向けて呟いてみる。答える声は、聞こえてはこない。
分かってはいてもそれが悲しくなって、誤魔化すように足元の落ち葉を蹴り上げた。かさりと舞い落ちる葉に、益々寂しさが募る。

――来年もまたこの場所で、一緒に紅葉を見よう。

ささいな約束。指切りまでしたそれは、結局はその時だけの形だけのものだったらしい。
もう一度、落ち葉を蹴り上げ歩き出す。
暦の上では、冬が来ている。もう直ぐ葉はすべて散り、雪が降り始めることだろう。
そうしたらきっと、諦めもつくはずだ。
それまでの日にちを心の内で数えながら、一人寂しく家へと向かった。

11/16/2025, 6:11:38 AM