目を開けると、恋人の胸元がドアップで現れて吃驚した。吃驚しすぎて身体が跳び跳ねそうになったけれど手足ががんじがらめに固定されていて動けない。どうやら私は恋人に抱き枕代わりにされているらしい。
どうしてこんなことになっているのだろう。思い返してみても心当たりがない。無理矢理腕の中から顔を出すと、目を閉じた彼の顔が写る。
「✕✕✕?」
彼の名前を呼ぶ。反応はなくて、代わりに寝息だけが聞こえてくる。
「寝てるの?」
返事はない。本気で寝ているみたいだ。
こんな風に抱き締められた記憶が今の今までなくて、心がむず痒い。次第にポカポカと胸の中が温かくなっていく。
「✕✕✕」
もう一度呼ぶ。反応はない。
むくむくと沸き上がる欲求に私は自分の腕を彼の背中に回して、胸元に顔を埋めた。さっきより彼との距離が縮まる。とくとく、と静かに奏でる心臓の音が心地よい。
「だいすき」
か細く告げた声に返事をするように、彼の腕の力が増した。
12/10/2025, 10:48:26 AM