『そういえば新年だけど抱負とかは決めたのかい?』
あたしの方に飛び込んでくる怪物に固有武器である銃を向けて今まさに撃つぞと意気込んだところでそんな声を掛けられた。
ここで動揺したらあたしが死んじゃう。だから答えを出さずに引き金を引いた。
銃の反動を受けてあたしは少し後ろに重心が傾いた。それをどうにか耐え抜いてみせれば、弾が当たったのか飛び込んできていた怪物はあたしに当たることなく消え去って、そうして辺りは紫色のおどろおどろしい空間から路地裏へと姿を変えた。
「……ふぅ」
軽く息をついて、胸元に付いているリボンをほどけば身体は光に包まれて、魔法少女の姿からいつものあたしの姿に戻った。
今日も無事に倒せた。怪我はしちゃったけど結界内で受けた傷は致命傷じゃない限り全部治る、らしい。らしいってのは致命傷を受けたことがないから『限り』の部分が分からないだけ。傷自体は毎回治ってるからそこは安心できる……はず。
それにしてもなんで固有武器が銃なんだろう。前にマスコットは個人個人の最も秀でた能力が魔法少女としての能力になるって言ってたけど。その理論からいくとあたしの最も秀でた能力が射撃能力とかになっちゃう。それはさ、結構嫌じゃない?
『ねぇ、カオル。話、聞いてたかい?』
もっともっと出来れば可愛い戦い方したかったな。それこそ本当に魔法が使えるようになる、とか。銃を生み出すとかじゃなくて、リボンで敵を縛り付けたり、風とか生み出して攻撃したり。
それじゃなかったらせめて可愛い銃が出せたら良かったのに。あたしが出せる銃ってぜーんぶ真っ黒。多分リアリティに溢れてるっていうか。魔法って感じ全然しない。
『カオル』
話を無視してたらとうとうマスコットはあたしの顔面にへばりついてきた。
「……離れて」
『話を無視するからだろう?』
「戦闘中に関係ない話をして集中出来なくさせようとしてきた可能性があるマスコットの話を聞く必要はあるの?」
『あのね、ボクとキミは仲良くなっておかないと』
当然でしょ、と言いたげな顔でマスコットはそう言った。理屈は全く分かんないけどそうだと言われればそうかもしれない。
「えっと、なんだっけ?」
『抱負だよ、抱負』
ほーふ。一年の目標的なやつだっけ。
「でも、あれじゃない? 『死なないようにする』じゃない?」
『それは魔法少女が持つ抱負だろう? キミ自身の抱負を聞いてるんだよ』
なかなかめんどくさいことを平気でマスコットは言ってきた。あたしは魔法少女なんだから、魔法少女が持つ抱負を言ったっていいじゃないか。
とはいえ、それを主張したってマスコットは聞いてくれそうもないから。
「じゃあ、あれ。中学三年生になってからの定期テストで全部八割取る。もう二年生のうちは無理だから、来年度は頑張るぞ、みたいな。なかなか14歳としてマシな答えじゃない?」
『……………………それは、来年度の目標ってことかい?』
「は? そう言ったじゃん。なんで変な確認してくるの?」
『……いや、いいんだ。なかなか学生身分としていい抱負なんじゃないかい?』
「うわ、偉そー」
一瞬だけほーふを言った時にマスコットは変な顔をした。悲しそうな苦しそうな顔。でもあたしには全く分からなかったし、なんとなくそれを追求する気にもなれなかった。
『さぁ、帰ろうか。そろそろ宿題に手を付けないとマズイ期間だろう?』
「うわ、嫌なこと思い出させて来た〜」
まだ昼を少し過ぎたくらいだから今日が終わるまでまだまだある。少しゲームをしたりしてからやってもきっとバチは当たらないだろうなんて、あたしはそう思った。
第二話 今年の抱負
1/2/2026, 4:06:55 PM