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「手のひらの贈り物」

満月が灰色の雲に覆われて、東に進んだ頃には、既に無くなっていた。俺は静かに銃を取り出す。一つの銃声が鳴り響く。太陽の光も、月光も無いこの街に慈悲が照らされることは無かった。



一発目。教会のドア。

聖書も祈りの言葉もただの雑音でしか無いけれど、この世の神は皆既日食の夜に現れると信じている事だけは好都合だった。


二発目。高音を鳴らした女の左腕。

右も左も分からないという言葉は、その言葉通りに使われることは無いらしい。修道服を来た老婆が大声をあげる。


三発目。ステンドグラス。

こんな古びた教会にステンドグラスなんてものがあるとは思わなかった。ガラスの割れる音は快感を引き起こした。



「神の降臨を邪魔する愚か者よ!武器を下ろせ!」
「....よ!.....よ!」


四発目。修道服。

あの黒くて禍々しい服を見ると、ふつふつと不快な感情と思い出したくもない記憶が蘇ってくる。あの愚かな女の怒り声も、病的な水滴も、不快で不快で仕方がない。そう。思ったよりも染まらなかったけれど。これは仕方がない。




「あぁ...悲しき少年よ...そのような形でしか祈れないのね...」



斜線がブレる銃を抑え込むように、生々しい感触が俺の両手に包み込まれた。その手は少し骨が張っていて、皮の厚く、酷く乾燥した手のひらだった。その、不快で、恐ろしい感覚は、腕を伝い、血を巡り歩き、心臓へと到達する。

ガシャン、古びた講堂に見合わない音が響き渡る。


「それでも神はあなたに慈悲を恵むわ。母親の愛情のようにね...」


その生々しい手のひらは、信念強く俺の手を包み込んだ。

月光が割れたステンドグラスの狭間から降り注ぐ。

ああ、時間が無い。



五発目、心臓。

12/19/2025, 11:48:53 AM