くっきりとした二重瞼、ふっくらとした涙袋。通った鼻筋。ぽってりと官能的な唇。シャープな顎のライン。
綺麗な綺麗な私の顔。そこに睫毛のエクステ、カラコンを着けて、メイクを施せば更に美しさは増す。
誰もが私を見る。綺麗ですね、って言ってくれる。
自分の顔が大嫌いだった。
父親に似た輪郭も、母親に似た鼻も。
知り合いのいない場所に引越して、全てをリセットした人生。私は幸せだった。初めは本当にそう思っていた。
陰口というのは勝手に聞こえてくるもので。
「やり過ぎ……」
「あれ、いくらかかってんの?」
気づけばひとりぼっちだった。
以前は家族だって友達だっていたのに。
自分の顔が大嫌いだった。
父親に似たエラの張った輪郭も。母親に似た団子っ鼻も。
そんな私を可愛いと言ってくれた恋人がいたこともあったけど。
もう以前の顔は思いだせない。写真も全て処分してしまった。
今は鏡に写る美しい自分を見ても他人にしか見えない。
家族も友達も恋人もいない。
「……ねぇ、あなたは誰なの?」
私自身でさえ、鏡を見ても自分を見つけることができない。
#2 2023/11/4 『鏡の中の自分』
11/4/2023, 3:45:50 AM