お題 : 一輪の花
一人歩く、外でも部屋でもない謎な廊下を。
手に持っているのは、無駄に長い剣。
この手に付いている赤い液体を見ながら思う。俺は、一体なんでこんなことしてるんだっけ。
昔、まだ子供だった時に家族が殺された。そのザマは、この手にこびり付いて離れない赤い液体と同じぐらいに残酷だった。
子供の頃は理解も出来なかったことを、青年になって理解して、復讐を誓った。そうだ、それがきっかけだ。
敵国との戦争。いや、これは殺し合い。
人間関係・学校生活。これまでは嘘でも感情を殺さず喜哀楽を使いこなしてきた。でも、そんな生活はもうやめた。
感情など殺した。同情などない。この”復讐”のためなら、俺はなんだってする。もう後戻りなどできない。
「████!」
後ろから、聞き覚えのある声が聞こえた。そこで、止めずにずっと歩き続けていた足を止める。
「やっと見つけた……今日もまた?」
「もちろん」
「これからまたある?」
「予定は無い」
「良かったぁ……あの、渡したいものがあるんだけど」
「何?」
両手で握られているそれは、1つの彼岸花。
彼岸花。何気に知っていたが、初めて見た。それが素直な感想。
「これ、███にあげたくて」
「………これを?」
「うん!それじゃ!……時間、邪魔したくないから」
嵐のように、一瞬な出来事。
花は好きだった。唯一興味を持ったもの。この世にある花は、大体記憶の中にある。花言葉も、大体なら覚えてる。彼岸花はなんだっけ。
_____独立。悲しい思い出。諦め。
あの日、目の前で死に赤い液体を浴びた思い出。
復讐を誓い、他人とは違う道を歩むことを決めた時。
昔、両親に言ったことのある叶うはずのない夢。
その瞬間、溢れ出すのは涙。
『花屋さんになりたい』と笑顔で両親に言った、そんな悲しい思い出。
ほんとうに、俺は勝手になにをしているんだろう。
そんなこと想って泣いたって、もう後戻りはできない。
今手にこびり付いているもの。あの日浴びたもの。今手の中で咲いている一輪の花。
茨の道にあるのは、『赤』という呪いだった。
2/24/2025, 10:43:44 AM