飛べない翼すら持っていない地球は、今日もぐるぐる回りながら太陽の周りを回っていた。
これはある意味では、宇宙を飛んでいると言える。
「ねぇ、どうして回っているの?」
遥か彼方から飛来してきた小惑星114514号は、地球のすれすれを通り過ぎた時に尋ねた。
「それは暇だからですよ」
地球ではなく、月が答えた。
月もまた、飛べない翼すら持っていない。
「暇すぎてわたくし、地球の海の高さも調節しているんですよ。干潮と満潮というでしょう?」
「なるほど……。でもその答え、はぐらかしてるよね。暇だから回ってるって。暇だから他のことしてるってことになるじゃないですか」
「なら、これならどうですか? 忙しいからですよ。
わたくしの干潮と満潮は、毛づくろいみたいなものです。地球は回っていて忙しいから、わたくしが代わりに毛並みを……、海並みを整えてあげてるんです」
「う〜ん、なんかしっくり来ないなあ……」
しかし、タイムリミットが来てしまった。
0.00000001 秒の刹那的短時間通信速度では、この程度の会話がやっとである。
小惑星114514号はそのまま遥か彼方へと飛んでいってしまった。
もう二度と地球には会えないだろう。
「まったく、きりがないですね……」
月は、適当に、ぐるぐる回りながら嘆きの呟きをしていた。
「まったくどうして地球に会いたがるんでしょう……」
月は、彼方から訪れる小惑星の列を見やった。
地球は大人気である。
白い雲は、白い翼のように見える。
包まっている姿は、今こそ飛翔する瞬間……。
そんな誤解で生まれた噂は、全宇宙に広がり、小惑星たちがスレスレで飛んでくるようになった。
その結末を知っていたら、誤解を解こうと奮闘したのに……。
過去の自分の過ちは、月の凸凹をみれば一目瞭然。
有名人の隣人は迷惑被る。今は飛べない翼こと白い雲から、いかに飛べる翼を作ることだけを考えている。
11/12/2024, 9:53:48 AM