_世界の終わりに君と_
「ねぇ、この世が最後になったらどうなるんだろうね…。」
静かにコーヒーを飲んでいた所、彼女が突然大きな疑問を抱くので口に含んでいたコーヒーが吹き出しそうになるのを堪えて飲み込んだ。
「今日は静かなもので心配でしたが…ふふ、急にどうしたんですか。…変な夢でも見ましたか?」
今日は普段みたいに明るい彼女の姿は何処にも見当たらなかった。何を言い出すのかと思っていたら、まさかの大胆な考え。ふふ、彼女らしくて可愛いですね…。
「ちょっと考えちゃって。昨日見た本にそんな感じのが書いてて、どうなんだろうなぁって思っただけだよ。」
「なるほど…。もし、世界が最後になったら…。俺とデートしてくれませんか?」
甘い言葉を彼女にうつつもりだったが、やっぱり彼女と一緒に過ごしたいと言う願望の方が勝って自分の我儘になってしまった。
「…デートだけでいいの?」
…?
彼女の頬は少し赤みが刈っていた。…彼女は何を考えているのだろう。
「どうしました……か。」
体をピタッと止める。彼女の意味深な言葉と赤くなっている理由を理解した瞬間。俺の顔はみるみる内に赤く染められていく。
「…俺はいつでも良いですけどね。」
これは本当だ。なんなら今も触りたいぐらい、彼女の事を好いているのだ。…これは彼女には言わないでおこう。
「…え、へ?い、いつでも…⁈。え、良いの?」
あたふたする彼女。混乱の目をしていて凄く可愛かった。
「はい、俺はいつでも貴方の側にいたいし、守ってやりたいです。でも、側にいるだけでも充分幸せですが…それだけじゃなにか物足りないですし…。」
そう言って俺は彼女に優しく抱きついた。強く抱きしめたら壊れてしまいそうな気者な体。俺の好きな甘い香り。サラサラでふわっとした髪。抱きしめるとわかる、この感覚。自分で抱いた癖にこれが俺を尚更ドキドキさせる原因でもある。
「……。」
俺は優しく彼女の頬を触り、キスの体制をとる…。
そうすると、彼女は慌てる様に俺に言った。
「キ、キスをして良いのは世界の終わりの時だけだよ、!
…ほら、もうハグし合っているんだし!充分よね…!」
そう言ってまた俺を強く抱きしめた。…最後の日までダメって事だよな…。
「…俺さっき言ったじゃないですか。物足りないって。それに、世界が終わるまで待てませんよ、たとえ終わりが来ようと、終わってほしくないです。貴方との幸せな時間を無くしたくないです。」
俺は真剣に彼女を見つめた。…これじゃあまるでキスをどうしもやりたい変態野郎みたいになってしまうか。まぁ、そうなんだけど。
「なので…俺は最後の時まで絶対に待てませんよ。」
「…ふふっ、ごめんなさい。私だって最後の時まで待てないよ。」
照れくさそうに言う彼女。俺も自分で言っといて、照れくさくなってきた。
「俺も耐えられません。毎日充電してもらわないと。」
「ま、毎日キスは恥ずかしいから…やだ。」
そう言う彼女は何処かいたずらそうに笑っていた。その後はまた俺を強く抱きしめた。ふふ、逃しませんよ。俺には貴方を守る権利があるから。
「もし、本当に最後が来たら、それまでに、沢山の幸せな思い出をつくりましょうね。」
6/7/2024, 11:36:08 PM