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ブランコ 2/1 (木).

「お隣、いいですか」

素朴というか、飾り気のないというか、暖かいというか。
そんな声で、ふと聞かれた質問に、適当に僕は答える。

「はい。」

はい、うん、わかった、おっけー。これは僕の口癖の数々であり、悪い癖である。
人になにかを聞かれるだとか、お願い、頼み事だとか。そんなことには大抵
こんな言葉を返すのが僕の癖で、大事を任されて徹夜をするのもしばしば。

その事を思い出し、はっとする。ふと隣を見やる。そこには、黒髪ミディアムの少女が
ブランコにゆらりと座っていた。

…なんだ、ただブランコの隣に座っていいか聞いただけか。
僕はほっとして、手の力をふわ、と抜く。そして、彼女の横顔にすこし見惚れた。

特別美人だとか可愛らしい顔立ちというわけではない。…失礼だが。小説などで
よくいる美しい女性はストレートな髪型だったりするが、この少女は毛先や前髪が
若干カールしていて、ふわふわ、と揺れている。恐らく先天的なくせ毛。
僕はその髪にも、きれいな瞳にも、不思議と惹きつけられる。

その少女は、僕に視線を合わせ、こう言った。

「ブランコって、素敵な魅力がありますよねえ」

「…そうですね」

そんな、適当な会話。それが、僕の心が穏やかに、緩やかに癒やされる。
僕は疲れているのかもしれない。僕は彼女と、にこにこと話をし続けていた。
……………
…よし。僕はペンを机に置き、小説を書き上げた。題名は、「ブランコ」である。

2/1/2024, 12:08:28 PM