テーマ「my heart 」
今日の道徳は「自分の心について考えよう」。
「自分の心はどんな時に嬉しくなるか?」
あれかなぁ。
走ってる時かなぁ。
あ、ゴール決めた時だな。
あと夕飯が玉ねぎ多めのビーフシチューだった時。
「自分の心はどんな時に悲しくなるか?」
ゴール外した時。
あとあれか、林と喧嘩した時とか。
夕飯が肉モードの時に魚だった時。
「自分の心はどんな時に優しくなるか?」
優しくなる?
優しくなるかぁ〜。あ、猫を見かけた時。
…って書けば多分モテるな。
クククと笑いながらシャーペンを走らせる。
猫の落書きも書いておく。
「はい、じゃあ席を立って、自由に意見交換してくださ〜い」
先生の指示に従って、適当に机を前にやる。
広いスペースが出来たところで先生の手が鳴る。
「10分間!」
一旦林を探す。どうせあいつも俺を探す。
「青野ー」
「林お前何書いた?」
「何も」
「書けよ!」
「全部アドリブで乗り切る」
「道徳の事舐めてんのか?心のノートが可哀想だろうが」
「逆に真面目に書いたんだ、気になる」
「あ、これどう思う?猫」
「ブサイクすぎるだろ」
「うわコイツやったわ。猫を見て優しくしないとか」
「体消して顔だけの方が可愛いと思う」
「あ、なるほど?ほーん」
「んじゃ」
消しゴムで猫の体を消しながら移動する。
よし、実験台は経た。流石メガネいつも光ってるだけあるな。
「紫村〜」
「何?」
「いや、何て。意見交換しよ!」
「まあいいけど」
紫村の肩まで伸びたおかっぱヘアが揺れる。
いつ見てもむっちゃ綺麗に切ってるなと思う。
「これ俺のやつ」
「これ私の」
「へ〜……」
結構ちゃんと書いてんなぁ〜てか字綺麗すぎね?
急に俺の字が見られるの嫌になってきたんだけど。
「でも青野前に逃げてたよね」
「え?」
「猫から」
「逃げて…え?逃げてねえよ多分」
「ダサ」
「勘違いだよそれ!逃げる理由ないもん!」
気づいた時には紫村は背を向けていた。
紫村は重大な勘違いをしている。変に言いふらされる前に撤回しなくては。
追いかけようとしたらお下げ髪が前を割った。
「青野〜…くん」
「ん?」
「見せ合い…」
「あ、いいよ。てかさっきの紫村の言ってたやつ聞いてた?あれ死ぬほどの嘘だからマジで」
「なんの事?」
「あ、ならいいや。ほらこれ俺の」
「私のこれ」
なんでアイツいつも俺に対して暴言吐いてくんのかなぁ。嫌い?もしかして。
「桃田はさ〜猫好き?」
「うん。あ、ビーフシチュー好きなんだ。へぇ〜」
「猫は?猫。これ」
「ホントだ。可愛い」
よし。
「ちょっとブサイクで」
「なんで桃田まで」
「アハハ!」
おさげの髪を揺らして桃田が笑う。
思ったのと違うけど女子が笑った…。
じゃ、いいか。
俺はニヤニヤした。
桃田の「自分の心はどんな時に嬉しくなるか?」を読んでいなかったことに気が付かなかった。
3/27/2026, 1:54:21 PM