なぁ、頼みがあるんだ
今すぐ家に帰れ、な?
『 』
あぁ、知ってる。
この商談が成功すれば、昇進できるもんな
そしたら、あいつにプロポーズするんだろう?
『 』
付き合って6年になるもんな
前の会社が倒産して、なかなか次が見つからなくて
そんな状態でも見捨てずに支えてくれた
お前にはもったいないくらい、いい女だよな
『 』
あぁ、だから、頼む
今すぐ帰ってくれ
『 』
今日、あいつ仕事休んだよな?お前の誕生日だからって
お前の好きなビーフシチューを1日がかりで作るんだって言って
きっと今頃、作ってる最中じゃないか?
幸せそうな顔してさ
ちょっと、調子の外れた鼻歌なんか歌ってさ
隠し味に味噌入れて……
見たいだろ?
そんなあいつを
聴きたいだろ?
ズレてるのに微妙に耳障りのいい鼻歌を
なぁ頼むよ、お前にしかできないんだよ
今すぐ帰って、温泉にでも連れて行ってやれよ
あいつをあの部屋から連れ出してくれ
なぁ、頼むよ…
お前、後悔するんだぞ
ずっとずっと、生きている間ずっとだ
1週間後、1ヶ月後、3ヶ月後、1年後、5年後、10年後、20年後
そして46年後の今も、こうして後悔してる
昇進なんかどうでもいい!
昇進しなくたって、死にやしない
プロポーズだって今すぐすればいい
お前はお前なんだから
肩書き1つでお前自身が変わるわけじゃないだろう?
お前はあいつを
肩書きがなければ、結婚してくれないような女だと
思っている訳ではないだろう?
『 』
それなら今すぐ帰って、あいつに言えよ
この先の人生、俺にくださいって
そしたらあいつ絶対に
泣きながら笑って、抱きついてくるよ
なぁ、頼むよ………
俺、あいつにプロポーズしたかったんだ
泣き笑いで抱きついてくるあいつを
腕の中に納めてキスしたかったんだ
そうしたら
俺の人生
すげぇ幸せだったと胸を張って言えるんだ
だから、頼む
あいつを------------------- 。
6/24/2024, 3:38:13 PM