霜月 朔(創作)

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新年


夜は、心を弱くします。
月の影が闇を生み出す様に、
過去の苦痛が囁き、
その闇に囚われぬよう、
心を強く抱き締めます。

寒い冬の夜。
悪魔の影が忍び寄り、
私を縛ろうとする度、
優しい声色で、
私に語りかけてくれる、
貴方の声と温もりだけが、
私を救う光なのです。

夜、貴方に護られながら、
眠りの淵へと揺蕩い、
朝、貴方の温かな声に、
揺り起こされると、
新しい一日が始まります。

夜が明ければ、
また、次の日がやって来る、
それは、変わらない、
繰り返される人々の営みの理。

だけど、
何故か、今日だけは、
特別な光が差し込むようです。

新しい年がやってきた、と。
皆が楽しげに、
耳に馴染まない、
挨拶を交わします。

「新年、
明けましておめでとうございます。」

一月一日。
他の日と何が違うのか、
私にはよく分かりません。

でも、貴方が微笑んで、
「今年も宜しくね。」と、
私に優しく囁いた、その瞬間。

新年という、堅苦しそうな代物も、
貴方が側に居てくれれば、
私の胸の奥が、暖かくなると、
気付いたのです。

ならば。
…この新年というものも、
悪くないのかも知れない、と。
私は、貴方に微笑み返すのです。

1/2/2025, 8:35:49 AM