死にたい少年と、その相棒

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  /見つめられると

アイツが俺を見つめる事はまず有り得ない。
逆もそうだ。
見つめるのだって、見つめられるのだって、想像しただけでトリハダがたつ。本当に、不愉快で仕方ない。

でも、ふとした時に頭に浮かぶのはいつだってアイツだ。
真剣に書類を見ている姿や、紙にペンを走らせる姿。どうでも良さそうに空を見上げては「死にたいなぁ」と零す姿に、好物を目の前にして少年らしく目元を緩める姿。

気付けば目で追いかけ、知らずのうちに見つめていた。
それに気付いたのはアイツが悪餓鬼のような笑顔で「僕の事、そんなに見詰めて。実は好きなの?」と揶揄うように言ってきたからだ。
「気持ち悪いからやめてよね」
そう言って直ぐに真顔に戻ったアイツを見た。
そこまで露骨に目は向けていないはずだ。たまに、隙を見て、ちらりと一瞬。たったそれだけの筈の視線に、アイツは気付いていた。

思わず失笑した。
「手前だって、俺の事よく見てんじゃねぇか」
アイツの、珍しくバツが悪そうにとんがった唇が、面白かった。

3/28/2023, 12:39:43 PM