木綿

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だって、あなたはあのひとが好きなんでしょう

水中に沈んだぼくは、ぼくの気持ちとふつうの正しいこたえが出てこなくて。
ぶくぶく、ぶくぶくと。パクパク動かす唇から。
どんどん酸素が抜けていって。
頼む、どうか僕の手を引いて、このまま底まで連れて行ってくれないか。
なにもなくていい。ふたりで、ただ楽しく。
しあわせに。

僕という水槽に溺れる自分自身に目を瞑って。
君と過せる時の鼓動も、抱きしめた時に心臓が縮むようなきゅっした、息が浅くなるような感覚も、ふとした時に感じる「こころ」の位置の存在も。
ぜんぶ、きみに伝えられないぼくの弱さ。
生まれてから育った土地での、閉鎖的な、柔い苦しみも。
ぼくで完結出来るなら。
どうか、しあわせになってほしい。

さあ、どうだろうな。そんな事もないけど。

そう言って少しずつ離れていった僕を、君は恨んだだろうか。それともそんな君に寄り添ったあの子が、癒したのだろうか。どちらにせよ、僕にはわからない。

きみをただ、すきだったこと以外は。

「やるせない気持ち」

8/24/2023, 10:50:46 AM