夜の祝福あれ

Open App

屋上の約束

秋の風が校庭を吹き抜ける午後、僕は屋上で彼女を待っていた。

「遅いな…」

空は高く、雲は薄く、世界は静かだった。そんな中、ドアが開いて、彼女が現れた。制服のリボンが風に揺れている。

「ごめん、遅くなった」

「ううん、来てくれてありがとう」

彼女――美月は、転校してきたばかりだった。誰とも話さず、いつも一人でいた。僕はなぜか気になって、声をかけた。最初は無視された。でも、ある日、彼女がぽつりと言った。

「…一緒にいてくれる?」

それから僕たちは、放課後を屋上で過ごすようになった。話すことは少なかったけれど、沈黙が心地よかった。

ある日、美月が言った。

「ねえ、もし私がいなくなったら、どうする?」

「…困るよ。僕、君と一緒にいたいから」

彼女は少し笑って、空を見上げた。

「ありがとう。そう言ってくれる人、初めてだった」

その日を境に、美月は少しずつ変わった。笑うようになり、教室でも話すようになった。僕は嬉しかった。でも、ある朝、彼女は学校に来なかった。

先生は言った。

「美月さんは、遠くの病院に入院することになりました」

僕は走った。電車に乗って、病院へ向かった。病室の窓から見える空は、屋上と同じくらい高かった。

「来てくれたんだ」

「うん。僕と一緒にいたいって言っただろ?」

彼女は涙を浮かべて笑った。

「じゃあ、約束して。これからも、ずっと一緒にいてくれる?」

僕は頷いた。

「もちろん。僕と一緒に、未来へ行こう」

お題♯僕と一緒に

9/23/2025, 12:49:28 PM