好きな色を、と問われたならば、何色でもない透明で。
「むぅ……」
放課後。私は一人、画用紙に向かってうんうんと唸っていた。別に悩むことじゃない、ただ好きなものを好きな色で描くだけ。けれども、それが私にはとても難しいことだった。
「好きな色で、かぁ」
好きな色。それならば、私は『透明』だ。けれど、何色もない訳じゃない。いろんな色に変わるけど、『透明』ということも変わらない、そんな色が、私は大好きだ。
けれど、誰にも分かってもらえることじゃないことは、私にも分かる。きっと、世間一般大多数は、鮮やかに色付いてこその『色』なんだろう。
だから、私は。
なにもないこの空気の中を、青く透き通る空を、緑の葉を透かして輝く光を、薄く、淡く、目の前の画用紙に色付けた。
6/21/2023, 10:19:39 AM