それは本当はずっと傍にあった。すぐ隣 手を伸ばせば届く位置に。いつだって真横にあった。
そう気づいたのは今さらで。それはとうに遅すぎて,確かにあったはずの救いはもうここには存在しない。
盲目の瞳では燦々と降り注ぐ光が眩しすぎて瞼を伏せたままでいた。温かいはずのそれは寧ろ烈火のようで身を焦がしてしまうから,見えないふりをした。
だから ね。闇夜の中 最後に一つだけ残った一筋の光は柔らかくて優しくて,どこか怖いんだ。蜘蛛の糸を切ってしまった彼の二の舞になりそうで。
それでも,仄暗い世界に射した光は美しいから。
«一筋の光»
11/5/2023, 3:22:21 PM